2026年11月6日(金)より全国ロードショーとなる映画『男ともだち』の舞台挨拶付き大阪先行上映が、10月29日(木)大阪ステーションシティシネマ(大阪市北区)にて行われ、主演の松岡茉優さんと、本作のメガホンをとった三島有紀子監督が登壇しました。本記事では、イベントの模様の一部をお届けします。
現在開催中の「第39回東京国際映画祭」のコンペティション部門に選出された本作。『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞した千早茜氏のロングセラー小説『男ともだち』(文春文庫)が、著者作品として初めて映像化されます。
松岡さん演じる主人公の神名は、京都で暮らすイラストレーター。才能を持ちながらも、身勝手で人間関係に不器用な神名の孤独や不安定な心情を繊細に体現し、30歳を目前に人生に行き詰まる姿をリアルに演じ切ります。観客の盛大な拍手の中、ステージに登場した松岡さんは「まずは何よりも、この平日のお昼間という時間帯に、こんなに大きな劇場で『男ともだち』を見ていただけること、本当に嬉しく思います。なるべく深くやわらかく映画のお話をして、そのまま映画に入り込んでいただけるような時間になったらと思っています」と笑顔で挨拶しました。

本作は、2026年2月に京都を中心に撮影され、劇中には実際の街並みや店舗が数多く登場します。三島監督は「この映画は、ここから電車で30分くらいの京都で基本的に作られていますので、こうして関西の皆さんとスタートを切れるっていうのが本当に嬉しいなと思います」とコメント。また、撮影に協力した京都の人気ラーメン店「博多長浜らーめん みよし」や「カフェ・フロッシュ」の関係者が会場に訪れていることを紹介し、二人は大きく手を振りながら感謝を伝えました。

ラーメン店での撮影について、松岡さんは「撮影の都合で、多分7杯くらいいただいたんですけど…」と切り出し、カットが変わるたびに湯気の状態をそろえる必要があったため、毎回出来たてのラーメンが運ばれてきたことを説明。撮影中はスタッフと分け合いながら美味しく食べたことを明かし、「みんなのお腹に入ったラーメンが(劇中に登場するときに)『あ、この時7杯くらい食べてたんだな』って思ってもらえるかなと思うんですけど」とユーモアを交えて語りました。
三島監督は、かつて自身が京都で暮らしていた経験から、観光地としての京都だけでなく、そこで暮らす人々が誇りに思う場所を撮影したかったと振り返りました。中でも「国立京都国際会館」での撮影については「人が出会った時に、ちょっとお話してコミュニケーションをとって、また離れるっていう、建築物として素晴らしい場所なんです。その人間の動線がすごくよく考えられているので、お芝居を考える上で最高に素晴らしい場所でした」と語りました。

さらに、京都の路面電車「京福電気鉄道(通称・嵐電)」での撮影エピソードも。実際に運行している電車を使用したため、撮影は時刻表に合わせた慌ただしいものだったそう。松岡さんは「嵐山まで来て、嵐山見ないで帰りたくないなと思って。でも、この電車に乗り遅れたら撮影ができないから、ここにいてくださいって感じだったの。(電車から一度出るために)『トイレ行きたいです』って言って出してもらって」と、急いで嵐山の景色を見に行ったことを告白。この行動を“脱獄”と表現した松岡さんに、三島監督は「え、そんなことしてたの!?」と驚き、会場は笑いに包まれました。
本作では、京都、富山、広島という三つの土地が物語の重要な舞台となっています。松岡さんは、撮影で福井へ移動した際の出来事を紹介。「長いトンネルを抜けると、そこが雪国だったんですよ。小説を地でいってるような撮影体験ができて。神名としても松岡としてもハッとしていて」と振り返りました。さらに、「ロケ地が変わるっていうのは、それだけ人の心が動くっていうことだと思います。今回は旅映画ではないんですけれども、三つの場所で撮影して、人生のロードムービーのような作品だなと感じています」と語りました。

本作で特に注目してほしいシーンの一つとして、三島監督は、成田凌さん演じるハセオと神名が三つの夜を過ごした先に見つけたものを表現する場面を挙げました。そのシーンでの芝居に大きく心を揺さぶられたといい、「カットをかけた後に本当に震えが来て、松岡さんに駆け寄って、抱きしめて『ありがとう』って言った覚えがあります」と明かしました。
松岡さんは、神名の浮気相手・真司を演じた中島歩さんとのエピソードを披露。初共演の日、中島さんが銀色のフリル付き“現場バッグ”を持っていたことが特に印象的だったといい、「後から現場バッグについて聞いてみたら『ちょっとギャルみ。ギャルっぽくしたかったんです、僕』って返ってきて」と振り返りました。さらに、観客に向けて「中島さんとのシーンは、すごい上質な色合いなんですけれども、笑って大丈夫です。ぜひ笑いながら見てください」と呼びかけました。
最後に、松岡さんは観客に向けて「三島監督とたくさんお話をして、直前まで会話をして、二人で乗り越えたシーンがたくさんあります。一人の女の子が大人になって、自分が抱えたものを乗り越える瞬間っていうのをぜひ見守っていただけると嬉しいです」と挨拶。三島監督は「私自身は、神名に寄り添うハセオとなってこの映画を作った気持ちでいたんですが、もしかしたらみんなが私のハセオとして見守ってくれながら完成できたのかなと思います。この映画は、いろんな傷を抱えながらも、すべてのことを糧にして次の扉を開けていくきっかけとなる映画だと思っております。皆さんの心の中でいろんな発見をしてもらえたら嬉しいです」とメッセージを送り、温かな拍手に包まれる中、イベントは幕を下ろしました。
取材・撮影・文/ Maika (Webサイト『映画とわたし』)
作品詳細

『男ともだち』
●Story●
京都に暮らすイラストレーター、神名。30歳を目前にした彼女は人生に静かな行き詰まりを感じていた。絵本で賞を獲り脚光を浴びたのは何年も前、最近は無茶なクライアントワークに神経をすり減らし、惰性や不毛な恋愛に逃げる日々を送っている。同棲中の恋人・彰人とは会話もほとんどなく関係は冷めていく一方、妻子ある医師・真司と逢瀬を重ねるも満たされはしない。そんなある日、神名の元に大学時代の先輩・ハセオから突然電話がかかってくる。昔から自分勝手で人間関係に不器用なのは自覚している神名だったが、出会った頃からなぜか自分のことを深く理解をしてくれる“男ともだち”と7年ぶりに再会。あの頃も今も変わらない温度で接してくれるハセオと過ごす、京都、富山、広島での“3つの夜”が神名の人生を大きく動かしていく。
2026年11月6日(金)
全国ロードショー
【出演】
松岡茉優 成田 凌
井上祐貴 中島 歩 咲妃みゆ 三浦貴大
余 貴美子 池畑慎之介
原作:千早 茜『男ともだち』(文春文庫)
監督:三島有紀子
脚本:澤井香織
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:カズモ
©2026『男ともだち』製作委員会

