2024年10月31日(木)、DolbyVision / Dolby Atmos で制作された作品と製作者を表彰する「Dolby Cinema Japan Awards 2024」が丸の内ピカデリードルビーシネマで開催され、水谷豊さん、山崎貴さんなど豪華クリエイター陣が登壇しました。本記事では、表彰式の模様の一部をオリジナルレポートでお届けします。
会場エントランスには、AVP(オーディオビジュアルパス)と呼ばれる巨大なモニターに、この日のために制作されたという「Dolby Cinema Japan Awards 2024」オリジナル映像が映し出され、ゲストがシアターに入る瞬間からその世界観に吸い込まれるような特別な演出が施されていました。
第37回東京国際映画祭内のイベントとして開催された「Dolby Cinema Japan Awards 2024」は、‟日本のコンテンツ産業の国際的な発展”と‟鑑賞体験の劇的な向上”に貢献するため、臨場感・立体感の DolbyVision / Dolby Atmosで制作された作品と製作者を表彰するアワード。
実写劇映画部門、舞台作品部門、新作アニメ部門、音楽ライブ部門の4つの部門において、国内で初めてDolby Cinemaとして制作された作品を表彰する「初 Dolby Cinema作品賞」と、ドルビーの技術を使用して制作に挑戦した作品や、業界に大きな影響を及ぼした作品が対象となる「特別賞」が設けられました。
初Dolby Cinema賞
轢き逃げ -最高の最悪な日-
ドルビービジョンのシネマ制作設備が日本になかった2019年に、ハリウッドにあるドルビーマスタリング施設で、最高の映像と臨場感を求めて上質な作品を制作しようと挑戦。
水谷 豊さん コメント
記念すべき第一回目の「Dolby Cinema Japan Awards 2024」で賞をいただけて、幸せと興奮に包まれています。『轢き逃げ -最高の最悪な日-』の撮影がはじまるときに、ドルビー本社で大沢社長にドルビービジョンとドルビーアトモスのプロモーション映像を見せていただきました。その時の衝撃と感動はいまも心に深く残っています。
小林 涼子さん コメント
はじめてドルビーシネマで映画を観た時の、音が後ろからくる感じ、わくわくする気持ち、そして本当の‟黒”ってこんな色だったんだと気付いたあの時の気持ち。いま座席に座っていて、改めて感じました。
会田 正裕さん コメント
ドルビーの技術に触れたのは、まだ日本にドルビーシネマが一つもできていないときです。HDRの映像を水谷さんと一緒に観る機会があって、水谷さんが「いつかこれで撮りたいね!」と言っていたことが、偶然が重なって、大沢社長との出会いもあり、実現しました。ますます邦画がドルビー作品でつくられて世界に届いていけば良いなと思っております。
遠藤 英明さん コメント
神戸で3週間ロケをしてお金が残っていないときに、水谷監督から「ドルビーシネマでやりたい」と提案がありました。当時は焦りましたが、プロダクションの東映さんにご尽力いただき、初のドルビーシネマとして仕上げることができました。
ゲキ×シネ『偽義経冥界歌』
2020年、コロナ禍で一部の公演が中止に追い込まれた「劇団☆新感線『偽義経冥界歌』」をゲキ×シネ化するにあたり、ドルビーシネマとして制作することを決断。舞台作品の映画化として初めてドルビービジョンとドルビーアトモスを活用し、映画館での新しい演劇体験をさらに高いレベルで実現。
金沢 尚信さん コメント
本作品は、コロナ禍と重なり、悲痛な思いをした記憶があります。(生田)斗真くん含め、キャスト、スタッフが非常に悔しい思いをしながらつくった作品でもあるので、このような賞をいただけるということは本当に嬉しい限りです。
劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
通常版の劇場公開後、極めて短い検討期間の中、日本の新作劇場アニメとして初めてドルビーシネマとして公開することを決断。
石立 太一さん コメント
この作品は、通常版としてすでに完成しており劇場公開もしていました。そのため、ドルビーシネマ版のお話をいただいたときは、正直一度作っていた完成版で完璧だと思っていました。ただ、その効果や表現方法、細かな部分までさらにこだわれるということを知り、また私自身も実際に体験して、作品の奥行、音響や映像が広がるということを実感しました。今後も、ドルビーシネマの技術を活用してより良い作品を作っていきたいと思います。
ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”
ライブ会場に行かないと その迫力が伝わらない時代、ライブの迫力を映画館で実現しようと挑戦。‟もう、見られないかもしれない”音楽ライブならではの最高の感動体験を、いつまでも何度でも見続けたいファンの想いに応えた作品。
堤 幸彦さん コメント
この作品は、ありとあらゆるノウハウを詰め込んだ作品です。余すことなく‟臨場感”を伝えるために、約125台ほどのカメラを用いて撮影しました。ドルビーシネマの技術を用いることで、東京ドームに居た人へも、はじめて映像でこのライブを体感する人へも、本当の意味での‟臨場感”を醸し出すことができたと思っています。
長坂 信人さん コメント
本作品の打ち合わせのときに、堤(監督)がいきなり「カメラ100台」と言ったときに、松本(潤)くんが「面白いじゃないですか!」というところからスタートしました。撮影当日、読売ジャイアンツのブルペンに約125台ほどのモニターが並んだときは、まるでNASAのコントロールセンターのような状況でした。
特別賞
君たちはどう生きるか
制作者が観てほしい状態を観客にそのまま届け、没入感を実現する手段として制作。劇場公開後、ドルビービジョンとドルビーアトモスで、ディスクへの収録と世界向け配信も実施。Dolby Theaterで授賞式が行われた、第96回アカデミー賞® 長編アニメーション映画賞 受賞作品。
奥井 敦さん コメント
昨年公開した『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿監督の10年ぶりの新作で、制作には7年かかっています。これまでの制作方法だと限界がきていると感じており、それを打開する策としてドルビービジョンとドルビーアトモスの技術を採用しました。表現の幅が本当に広がって、宮﨑駿監督の目指す作品づくりに貢献できたと考えています。
古城 環さん コメント
7年間、スタッフみんなで映像を作っていて、私は音響を担当していました。前作はモノラルで音源をつくりましたので、今回ドルビーアトモスということで監督に「うるさい!」と怒られないように、みんなで一生懸命頑張って作りました。
ゴジラ-1.0
世界基準のACESワークフローを用いて、広い色域と階調、コントラストを表現できるドルビービジョンを最大限に活用した映像制作を行い、さらに音響面でもドルビーアトモスによって臨場感あふれる「体感型」の音響を実現。Dolby Theaterで授賞式が行われた、第96回アカデミー賞® 視覚効果賞 受賞作品。
山崎 貴さん コメント
随分前から、ドルビーシネマで映画を作るということが憧れであり、ようやく『ゴジラ-1.0』で実現できました。僕らが(作品を)つくるということ、それを本当に高いところに、下駄を履かせてくれるというか、底上げしてくれるというか。ドルビーの素晴らしい技術があるからこそ、ゴジラがより恐ろしくなったのではないかと感じています。
岸田 一晃さん コメント
『ゴジラ-1.0』を制作するなかで、‟映画館で体感すべき映画を目指していこう”ということをずっと合言葉にしてきました。まるでゴジラが目の前に立っている、そこに自分がいるかのような体験を目指してきました。ドルビーの技術を用いることにより、ゴジラがよりビビッドに、より怖く、近く感じられるようになったと思います。
FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM
言霊の幸わう夏
@NIPPON BUDOKAN 2023
日本武道館で行われたコンサートを収録し、映画化。福山雅治監督によって打ち出された、「究極の“ライブを超えたライブ体験”」というコンセプトを、ドルビービジョンの映像とドルビーアトモスの立体音響を有効に活用して具現化。
石井 宏祐さん コメント
本作品は、アーティストであり俳優である、福山雅治さんの初監督作品です。当初は、生のライブを超えることは難しいのではないかと思っておりましたが、色々なアイディアを出し合い、スタッフの熱量とともに進めていきました。アーティストが理想とする音の聴こえ方やライブの見え方がドルビーの技術によって再現できる可能性を感じ取り、制作に至りました。
BABYMETAL LEGEND
– 43 THE MOVIE
大規模ツアーを締めくくる沖縄公演、「BABYMETAL WORLD TOUR 2023 – 2024 TOUR FINAL IN JAPAN LEGEND – 43」の ライブフィルム『BABYMETAL LEGEND – 43 THE MOVIE』が、日本初の音楽カテゴリー‟メタル”として、また日本初の女性グループアーティストとして、8月からドルビーシネマで公開。
Hiroya Brian Nakanoさん コメント
本作品は、彼女たちのライブパフォーマンスの魅力と、臨場感を詰め込んだ作品となっています。これから海外での上映も決まっていますので、たくさんの方に観ていただけたら嬉しいです。
(Dolby Cinema 3D)
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
米国では増えてきたドルビーシネマ3Dを採用した、初の日本関連作品。大ヒット作品となり、マリオファンを他では体験できない明るい3D映像で魅了。
山﨑 敏さん コメント
日本が誇るスーパーマリオと、ハリウッドのスタジオの映画を作る力が結集した作品を、日本の劇場にお届けすることができて、そしてドルビーさんの素晴らしい技術でお届けすることができて、本当に幸せでした。素晴らしい賞をありがとうございます。
サカナクション
2013年のツアーで、日本で初めてドルビーサラウンドを活用してライブを実施。2019年のツアーを収録したBlu-rayではドルビーアトモスを採用し、その効果を語るプロモーションビデオのYouTube展開など、音楽分野のイマーシブな体験の普及に大きく貢献。
野村 達矢さん コメント
サクナクションは、2013年にVRやXRなどの疑似体験がどんどん進化していくなかで、いかにライブの実体験の価値を上げていくことができるかということにアグレッシブに挑戦し、幕張メッセでサラウンドでの音響システムを取り入れたライブを開催しました。来場者の方々にも本当に満足していただき、驚きも含めてライブ体験の価値をあげることができました。ドルビーさんと音響を追求していった賜物だと思っています。
東映株式会社
日本国内に初めてドルビーアトモス対応劇場がオープンした2013年、ほぼ同時期に、東映東京撮影所内に日本初のドルビーアトモス対応ダビングステージを導入。
吉村 文雄さん コメント
リリース前のドルビーアトモスのデモをスタッフが拝見する機会があり、非常に感銘を受け、スタッフの熱意で2013年にドルビーアトモス対応ダビングステージを導入しました。これからも、日本の映画界を含めて貢献していきたいと思っておりますし、改めてドルビー様と一緒に作品づくりを進めていきたいと思っています。
株式会社IMAGICA
エンタテインメントメディアサービス
ドルビーシネマが国内に導入され始めた2019年、当時の東京映像センターに「ドルビービジョン プロジェクションシステム」を導入。
中村 昌志さん コメント
IMAGICAは、およそ90年前にフィルムの現像所としてスタートして以来、映画の作り手の方々が求める映像や音響を劇場にまでお届けしたいという想いを一つにして、仕事をしてまいりました。時代に合わせて、その時々の最高のテクノロジーの導入につとめてまいりましたが、ドルビーシネマはまさにその代表例だと思っております。
(Streaming)
SHOGUN 将軍
ドルビービジョンと5.1chで制作されたドラマ作品。コントラストも鮮やかに描かれた夕暮れに灯る松明のシーン等、ドルビービジョンで魅力的な映像を表現。2024年の第76回エミー賞®受賞作品。
宮川 絵里子さん コメント
日本を代表するクリエイターと制作者の皆さまと、この壇上に立つことができて心より光栄に思います。『SHOGUN 将軍』は、言葉の壁、文化の壁を越えて世界中のスタッフとキャストが一丸となって作った作品です。この場をお借りして、『SHOGUN 将軍』を支えてくださった皆さまに心よりお礼を申し上げます。
西岡 徳馬さん コメント
2021年、コロナ禍に撮影がスタートし、真田広之くんに久しぶりに会って「日本人の精神と、日本の武士道の精神、本当の時代劇を伝えたくて、俺はこの作品を受けたんだ。」と話をしたら、「僕も同感です!本当の時代劇をお見せしましょう!」と、固い握手をして誓いました。11月16日から劇場で第一話と第二話が上映となりますので、ぜひお楽しみいただけたらと思います。
デイヴ・パウエルさん コメント
ディズニープラスで配信されている『SHOGUN 将軍』は、壮大なストーリーと素晴らしい映像で、視聴者を魅了しています。宮川さんや西岡さんをはじめ、才能あふれるチームが文化的に豊かなシリーズを現実的なものにしてくれたことを心より誇りに思います。
最後に、Dolby Japan株式会社 代表取締役社長 大沢幸弘さんが「“Science Meets Art(科学がアートに出会う)” そんなドルビーがお届けしてまいりました。日本の心、世界に届け。クリエイティブの皆さまのお手伝いを今後とも続けていきたいと願っております。そんな私どもの活動をご支援いただき、本当にありがとうございます。」と挨拶を行い、約2時間にわたる「Dolby Cinema Japan Awards 2024」は幕を下ろしました。
取材・撮影・文/ Maika (Webサイト『映画とわたし』)