【試写レビュー】『アニエス V.によるジェーン B.』、『カンフーマスター!』デジタルレストア版・新訳日本語字幕版《8月23日より全国順次上映》

昨年7月16日に急逝したジェーン・バーキン没後一年を追悼して、アニエス・ヴァルダとのコラボレーションにより実現した『アニエス V. によるジェーン B.』『カンフーマスター!』を、デジタルレストア版・新訳日本語字幕版で「ジェーン B.とアニエス V. 〜 二人の時間、二人の映画。」と題して 2024年8月23日(金)より順次公開されることが決定しました。

長い闘病生活を経て復調を伝えられ、パリ・オランピア劇場での公演に向けて準備を進めているとその動向が報道されていた矢先に急逝したジェーン・バーキン。マクロン大統領が弔意を示し、カトリーヌ・ドヌーブ、シャーロット・ランプリングら多くの映画人・音楽家がその死を悼みました。葬儀は全仏に生中継され、国民の悲しみは計り知れず、また親日家だった彼女の訃報は日本のファンの心の中にも、悲しみの記憶として深く刻まれました。

あれから一年。ジェーン・バーキンの魅力を再認識するために、弾けるような彼女の美しさと生命力を封じ込めたような二作品が、新たにデジタルリストア版・日本語字幕新訳版で公開されます。

『アニエス V.によるジェーン B.』デジタルレストア版

アニエス・ヴァルダとジェーン・バーキンのインティメートな関係性の中で完成した、奇跡の映画。

「ジェーン、いつもカメラのレンズを直視することを躊躇うのはなぜ?」
ジェーンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、アニエス・ヴァルダの伝説の女性への尽きることのないイメージがヴィヴィッドに展開する。その空想は、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのような男たちのファンタジーの対象、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・ジェーン、ターザンとジェーン、そしてジャンヌ・ダルクへと、ジェーンのイメージを自由自在に拡張させていく。一方で綴られるジェーンの日常のスケッチ。そこにはセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの時間も織り込まれる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しくて危うくて儚くて美しい、ジェーン・バーキンの魅力が余す事なく詰まっている。

試写レビュー

ジェーン・バーキン。エルメスの代名詞とも言われる「バーキン」の名前の由来にもなったイギリス人女性。俳優やミュージシャンとしてだけでなく、ドラマティックな私生活も大きな注目を集めました。本作は、そんな彼女の魅力をぎゅっと詰め込み、自由な創造的アプローチで映像化した作品です。エッフェル塔の前で自身の「バーキン」の中身を大胆に紹介するシーンは、あまりに印象的。

プライベートでも親交のあったアニエス・ヴァルダだからこそ引き出せる、ジェーンの愛らしくてユニークな世界観。《夢は有名な無名人》というジェーンの自由な発想に魅了されて、アニエスは神話や映画の記憶、夢などに彼女を当てはめて“変装”させることを企画。カフェや自宅、スタジオ、パリの各名所といった舞台で、まるでパッチワークのように組み合わさるカラフルで多種多様な映像に、どんどん引き込まれていきます。

そして、インタビューにこたえる彼女の言葉が詩のようで、台詞のようで、素のままの言葉のようで。リズミカルで心地の良い新訳日本語字幕とともに、いざカラフルでノスタルジックな映像の旅へ…。

文/ Maika (Webサイト『映画とわたし』)

監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン 、ジャン=ピエール・レオー、ラウラ・ベティ、フィリップ・レオタール、アラン・スーション、セルジュ・ゲンズブール、シャルロット・ゲンズブール、マチュー・ドゥミー、フレッド・ショペル
1988年/フランス/99分/原題:jane b. par agnes v.

『カンフーマスター!』デジタルレストア版

ジェーンのアイデアにアニエスが応じて映画化。40歳女性が15歳少年に恋するお話。

ジェーン・バーキンから発案された『アニエスV.によるジェーンB.』の為のプロットの一つを、ア二エス・ヴァルダが独立した作品として映画化が実現した作品。娘・ルシー(シャルロット・ゲンズブール)が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン(マチュー・ドゥミ)を介抱したマリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を抱くようになる。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる二人。そんなある日、二人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。パリとロンドンのジェーンの自宅と実家で撮影。シャルロットの他、ルー・ドワイヨン、アンドリュー・バーキン、ジェーンの実の両親などファミリーが総出演している。タイトルはジュリアンが夢中になっているゲームの名前が由来。

試写レビュー

「カンフーマスター」は、劇中に出てくる《白い服の格闘家が塔で敵を倒す》ゲームの名前。このゲームに夢中な少年ジュリアンと、ジェーン演じるマリーが“不思議な関係”へと発展する物語です。

本作を語る上で、『アニエスV.によるジェーンB.』のなかに登場するジェーンとア二エスの対談は欠かせません。12歳の頃から本を読むことが好きで空想の物語を書き留めていたというジェーン。大人になってからは独りになれる唯一の場所である“浴室”で物語を書き続け、そこで生まれたものをベースに本作が誕生しました。

15歳の少年と40歳の女性が“不思議な関係”へ発展するというアグレッシブな設定はさることながら、自身の自宅と実家で撮影が行われたり、ファミリーが総出演するといった《距離感》が、空想の世界によりリアリティを持たせているように思います。画面いっぱいに広がる、レトロなゲーム画面にも注目です。

文/ Maika (Webサイト『映画とわたし』)

監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン、マチュー・ドゥミ、シャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨン、デヴィッド・バーキン、ジュディ・キャンプベル、アンドリュー・バーキン
1988年/フランス/88分/原題:Kung-fu Master

ヌーヴェルバーグ左岸派の母として、『幸福』『歌う女、歌わない女』『冬の旅』などの映画史に残る作品を残し、2019年に90歳で亡くなったアニエス・ヴァルダ。彼女がプライベートでも親交のあったジェーン・バーキンという女性を、自由な創造的アプローチで映像化したのが、今回上映する『アニエス V.によるジェーン B.』と『カンフーマスター!』。この二作品は、バーキンのパリの私邸とロンドンの実家で撮影されており、出演しているのも彼女の家族や友人たち。『カンフーマスター!』ではヴァルダと夫ジャック・ドゥミ監督の実子であるマチュー・ドゥミが、バーキンの相手役を演じるなど、非常にインティメイトな関係性の中で撮影され、ドキュメントとファンタジーが融合されたような、ヴァルダらしい世界観が描かれています。

「ジェーン B.とアニエス V. 〜 二人の時間、二人の映画。」のポスターデザインを手掛けるのは、日本における映画ポスターデザインの第一任者、大島依堤亜氏。ジェーン・バーキンのとアニエス・ヴァルダのを大胆に配置し、フランスを代表する二人の女性の世界観を、大島氏らしいユーモアとフェミニンでスタイリッシュな表情に仕上げています。また今回、日本語字幕も新訳版で公開。『アニエス V.によるジェーン B.』は『ジェーンとシャルロット』『恐るべき子供たち4Kレストア版』の横井和子氏、『カンフーマスター!』は『ソウルに帰る』『エッフェル塔〜創造者の愛〜』の橋本裕充氏が手掛けました。

「ジェーン B.とアニエス V. 〜 二人の時間、二人の映画。」

8月23日(金)より
ヒューマントラストシネマ有楽町 / テアトル梅田 他にて
全国順次公開

配給:リアリーライクフィルムズ

©︎ CINÉ TAMARAS / ReallyLikeFilms 2024

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この記事を書いた人

【取材、撮影、記事作成など、Webサイト『映画とわたし』に関わる全てのことを担当】

兵庫県神戸市出身、関西大学卒業。大学在学中にシンガーとして音楽活動を開始。CDリリースや数々のアーティストのバックコーラスを経て、ディズニー映画『美女と野獣』の日本語版デュエットソングDAMガイドボーカル(第一興商)を務める。卒業後は、関西のマスメディアで業務に携わり、2019年には神戸のラジオブースでパーソナリティとして活動。
2022年には、阪神百貨店で開催されたバレンタイン催事のイメージソング『Strawberry』を制作。Webメディア『映画とわたし』の運営を中心に、記事掲載や写真・動画撮影、音楽を通してモノやコトの魅力を発信中。