【試写レビュー】映画『哀れなるものたち』 平等と自由を知った主人公の“成長”を見守り、考え、魅せられる。《過激》にして《壮烈》なダークファンタジーの世界が開幕!壮麗なセットや衣装、音楽にも注目。

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

第80回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝き、先日の第81回ゴールデングローブ賞では作品賞、主演女優賞(ともにコメディー/ミュージカル部門)を受賞した、いま世界中で大注目の映画『哀れなるものたち』が 2024年1月26日(金) 全国公開されます。

本作は、全世界で大ヒットを記録した『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督エマ・ストーンが再集結して描く最新作。世界最高峰の才能を集めて構築された、映画史上最も大胆な冒険物語です。

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公開に先立ち、『哀れなるものたち』(2D 字幕版上映) の試写会が開催されました。本記事では、本作の見どころをはじめ、多方面から作品の魅力に迫ります。

■STORY■

自ら命を絶った不幸な若き女性ベラ(エマ・ストーン)が、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手によって奇跡的に蘇生することから始まる。蘇ったベラは“世界を自分の目で見たい”という強い好奇心に導かれ、放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)の誘いに乗り、壮大な大陸横断の冒険の旅へ出ていく。やがて貪欲に世界を吸収していくベラは、平等と自由を知り、時代の偏見から解き放たれていくのだった。

“ゼロ”から始まる、女性の冒険物語

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原作となる小説は、スコットランドを代表する作家アラスター・グレイによるもの。1992年に発表され、知的な仕掛けと奇想によって甦る“ゴシック小説の傑作”として人気を博しています。ヨルゴス・ランティモス監督は、アラスター・グレイの小説を「テーマ、ユーモア、登場人物や言葉の複雑さがあり、視覚的に非常に印象的でありつつ難解。」と分析。同時に強く心を奪われ、長きに渡り“映画化”することを望み、物語に深い情熱を注いできました。

小説はさまざまな視点で描かれ、テーマや階層が多く存在しているのに対し、本作の脚本においては“ベラ”という一人の女性の視点で描かれています。自ら命を絶った不幸な若き女性が、天才外科医の手によって奇跡的に蘇生することから始まる物語。日に日に回復する彼女が「世界を自分の目で見たい。」という心からの強い願望を抱き、冒険の旅が始まります。リスボン、アレクサンドリア、パリ、そしてロンドン。「ヨーロッパ大陸横断旅行」というキーワードを取り入れた唯一無二の冒険物語は、少し尖った“青春”のような感覚。そのなかには、セクシュアリティと社会的制約というメインテーマ、そして知性とユーモアを兼ね備えた濃厚なダークファンタジーの世界が存分に詰まっています。

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瞬間を自由に生きるベラ、そんな彼女を独自のやり方でコントロールしようとする男性たち。 “欲望”と“狂気”が織りなす社会が、今までにないほど大胆かつスタイリッシュに、見事に描かれていました。
“自由に生きるって最高じゃない?” ー  ジェンダー、年齢、国籍、 時代、そのすべてを超越して、目標を持ち、真の自由を手にするために前へと進み続ける主人公から、私たちもちょっぴり大胆に一歩踏み出すためのヒントをもらえるかもしれません。

主人公ベラと、彼女を取り巻く破天荒なキャラクター

【ベラ・バクスター】純粋で自由なヒロイン

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生きることに意欲的で、人間として経験することすべてに興味津々なヒロイン。ベラを演じるのは、『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞®︎主演女優賞を受賞し、本作で2度目の受賞が期待されるエマ・ストーン。真の自由を手にするために前へと進み続ける主人公を、繊細な動きや表情、仕草、発声、奇妙なダンスなどでダイナミックに演じきり、誰もが初めて出会う爽快なキャラクターを映画史に残しました。今回はプロデューサーとしても名を連ね、企画の立ち上がりの段階から世界観を作り上げることに貢献しています。

【ゴッドウィン・バクスター】有能でトラウマを抱えた科学者

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ベラの父親代わりとなる、天才外科医。社会の規範を気にすることなく、自分の科学と芸術をどこまでも突き詰めようとします。バクスターを演じるのは、 『永遠の門 ゴッホの見た未来』 などでアカデミー賞®︎に4度ノミネートされた名優ウィレム・デフォー。バクスターに鮮烈な人間性を植え付け、単なる実験対象とは言い切れないベラとの特別な関係性を見事に演じきっています。

【ダンカン・ウェダバーン】ベラを外の世界へと連れ出す男性

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一目でベラを気に入り、彼女を波乱の旅に連れ出す弁護士の男性。ナルシストで自己中心的、不安定な一面も。ダンカンを演じるのは、『アベンジャーズ』シリーズのハルク役で広く知られるマーク・ラファロ。男性支配者的なメンタリティを持つキャラクターのなかに、どこか温かみやナイーブさを感じさせる繊細な演技に魅了されます。

劇中を彩る壮麗なセットや衣装、音楽にも注目

とことんこだわり抜いた、壮麗なセット

当初はブダペストやプラハといった実際の都市をロケ地の候補としてあげていましたが、1930年代の映画にインスピレーションを受けたランティモス監督は、“セットを作り込み、スクリーンで表現すること”が究極的に映画の一部となることを望みました。実際に、スクリーンにはSF的であったり、空想的であったり、ときにクラシカルなスタイルを取り入れたりと、様々な要素が入り混じった唯一無二の美しい空間が映し出されています。バクスターの家や、ベラの冒険を彩る遠洋定期船、パリの広場などもスタジオのセットが使用されており、その広さも桁違い。すべてのセットを歩き回るのに、30分ほどの時間を要するのだそう!

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ベラが纏う、大胆で美しい衣装の数々

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本作の衣装デザインを担当したのは、ホリー・ワディントン。ベラが成長し、社会に出ていくにつれて衣装にも彼女の‟目覚め”が色濃く反映されています。特に、ヴィクトリア朝風のブラウスや、フェミニンなパフスリーブのジャケットは印象的。ベラを演じたエマ・ストーンは、自身のキャリアのなかでも本作の‟ウェディング・ドレス”がお気に入りの衣装になったことを明かし、「この上なく素晴らしいものでした。薄く繊細でありながら、とても強いのです。」と、大絶賛しています。

不可思議で超人的な音楽

本作の音楽を担当したのは、ジャースキン・フェンドリックス。音楽もまた、ベラの感情がより深く複雑になるにつれて、新たな色と質感を帯びているように思います。彼女と同じように、音楽も、圧倒されたり、ショックを受けたり、吐き出したり ー。
フェンドリックスは、本作の持つ奇妙で超人的な雰囲気とマッチさせるために、空気や力学にまつわる楽器をふんだんに使用。パイプオルガン、イルン・パイプ(アイルランドのバグタイプのようなもの)といった木管楽器をはじめ、多くの合成された息や声などが質感の大部分を占めています。なかでも ‟Bella” は、特にベラの《初期》に当てはまる 純真さや子供のような仕草に華を添える一曲。まるで音が曲がったかのように聴こえる、摩訶不思議で独特な音色に魅了されます。

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『哀れなるものたち』作品詳細

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2024年1月26日(金)
全国劇場にて公開

※R18+

■監督:ヨルゴス・ランティモス『女王陛下のお気に入り』
■出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ ほか
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■北米公開:2023年12月8日
■製作年:2023年
■製作国:イギリス
■原題:Poor Things
■原作:「哀れなるものたち」(早川書房刊)

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この記事を書いた人

【取材、撮影、記事作成など、Webサイト『映画とわたし』に関わる全てのことを担当】

兵庫県神戸市出身、関西大学卒業。大学在学中にシンガーとして音楽活動を開始。CDリリースや数々のアーティストのバックコーラスを経て、ディズニー映画『美女と野獣』の日本語版デュエットソングDAMガイドボーカル(第一興商)を務める。卒業後は、関西のマスメディアで業務に携わり、2019年には神戸のラジオブースでパーソナリティとして活動。
2022年には、阪神百貨店で開催されたバレンタイン催事のイメージソング『Strawberry』を制作。Webメディア『映画とわたし』の運営を中心に、記事掲載や写真・動画撮影、音楽を通してモノやコトの魅力を発信中。