【試写レビュー】『憐れみの3章』愛と支配をめぐる“3つの物語”で構成された、大胆不敵な作品集

©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画『憐れみの3章』が 2024年9月27日(金) より劇場公開されます。本作は、『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』に続いてヨルゴス・ランティモス監督エマ・ストーンがタッグを組み、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー。選択肢を奪われ、自分の人生を取り戻そうと格闘する男、海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官、卓越した教祖になると定められた特別な人物を懸命に探す女。独立した3つの大胆不敵な物語の先に、映し出される人間の真実とは…?

公開に先立ち、『憐れみの3章』 (2D 字幕版) の試写会が開催されました。本記事では、映画を構成する3つの物語とそれらを彩る音楽の魅力に迫ります。

ヨルゴス・ランティモス監督の新たな‟仕掛け”に魅了

本作の最大のポイントは、『憐れみの3章』というタイトルにもあるように 3つの物語=章で構成され、同じキャストがそれぞれ異なるキャラクターを演じているということ。そして、まったく接点のない3つの物語がいつしかリンクしていき、とある“共通点”が浮き彫りになっていく…!?

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それぞれの物語のなかで目を見張るキャラクター達を演じ分けるのは、2度のオスカーに輝き ランティモス監督との最強タッグで世界を魅了し続けるエマ・ストーンに加え、『哀れなるものたち』でその存在感を目に焼き付けたウィレム・デフォーマーガレット・クアリー。そして、本作で見事にカンヌ国際映画祭 男優賞を受賞した若き名優ジェシー・プレモンスが鮮烈な人間像を刻み、さらに、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファーといった強烈な個性と魅力溢れる出演者たち。髪型やメイク、服装はもちろん、口調や表情、所作にいたるまで、それぞれの物語に応じて “変身”しつつも、さりげない“共通点”を加えたたしかな演技力に、観客は別世界へと導かれていくような何とも不思議な感覚に襲われます。

アンソロジーの魅力といえば、最初の物語で考えたことを次の物語、さらにその次の物語へと持ち込み、複雑かつ魅力的に演出できること。ヨルゴス・ランティモス監督の新たな‟仕掛け”とチャレンジに、世界中の映画ファンが釘付けになります。

愛と支配をめぐる、3つの物語。

R.M.F.の死
行動、食生活、妻との性生活まで、すべてを上司の指示に従ってきた1人の男。ある出来事を境に、男は上司の信頼を失い、事態は急展開を迎えることになる…。
選択肢を奪われ、自分の人生を取り戻そうと格闘する男を描く物語。

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R.M.F.は飛ぶ
海洋調査に出た妻が行方不明となり、事あるごとに彼女の面影を見出すなど精神的なダメージを負っていた警察官の男。しばらくして、妻が海難事故から生還したという知らせが届くが、男は《妻は“別人”》だと疑い、やがて被害妄想にとりつかれていくのだった…。

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R.M.F.サンドイッチを食べる
カルト集団の教徒である女と男は、教祖にふさわしい特殊能力をもった人物を探し、各地を移動している。教祖の資格として求められるのは、《双子の女性の一人で、もう一人が亡くなっている》ということ。教徒の女は、ある出来事をきっかけに教団を追放されるも、果たして懸命に探し続けている人物に出会うことができるのか…。

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大胆不敵な物語を彩る衝撃の「音楽

ユーリズミックス,アニー・レノックス&デイヴ・スチュワートによる「Sweet Dreams (Are Made of This) [Remastered]」は、本映画を語る上で欠かせない楽曲の一つ。シンセサイザーにスポットを当てたパワフルな80年代サウンドが映画の幕開けを飾り、無機質なサウンドとソウルフルなボーカルが観客を包み込みます。

さらに、劇伴は『哀れなるものたち』に続いてジャースキン・フェンドリックスが担当。本作では、《ピアノ曲》と《合唱曲》による未知なる音楽が全編に鳴り響き、不穏ながらもエモーショナルな効果をもたらします。
《ピアノ曲》は、クラシック調から、不協和音で構成されたもの、単音が繰り返し鳴り響くものまで、さまざまな楽曲で構成。また、《合唱曲》は、高音と低音のコーラスがうねるように繰り返され、映像だけでなく”耳”からも恐怖心を煽ります。支配と欲望、愛と服従、信仰と盲信の間で揺れ動く人間の本質、そして精神的に追い詰められていく登場人物の感情を見事に表現したアーティスティックなスコアだと思います。

文/ Maika (Webサイト『映画とわたし』)

憐れみの3章』作品詳細

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2024年9月27日(金)
全国劇場公開

【監督】ヨルゴス・ランティモス 『哀れなるものたち』『女王陛下のお気に入り』『ロブスター』
【出演】エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、 ホン・チャウ、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファー
【配給】ウォルト・ディズニー・ジャパン
【北米公開】6月21日
【製作年】2024年
【原題】KINDS OF KINDNESS

※ R15+

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この記事を書いた人

【取材、撮影、記事作成など、Webサイト『映画とわたし』に関わる全てのことを担当】

兵庫県神戸市出身、関西大学卒業。大学在学中にシンガーとして音楽活動を開始。CDリリースや数々のアーティストのバックコーラスを経て、ディズニー映画『美女と野獣』の日本語版デュエットソングDAMガイドボーカル(第一興商)を務める。卒業後は、関西のマスメディアで業務に携わり、2019年には神戸のラジオブースでパーソナリティとして活動。
2022年には、阪神百貨店で開催されたバレンタイン催事のイメージソング『Strawberry』を制作。Webメディア『映画とわたし』の運営を中心に、記事掲載や写真・動画撮影、音楽を通してモノやコトの魅力を発信中。