今も世界中に熱狂的なファンを持つ、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎。北斎の弟子であり、娘の葛飾応為の謎多き人生を描く映画『おーい、応為』が2025年10月17日(金)より全国公開となります。
長澤まさみさん演じる“お栄”は、北斎の右腕として活躍し、やがて「葛飾応為」という号を授かり、当時は珍しかった女性の絵師として江戸の芸術界を駆け上がっていきます。“描くこと、それこそが生きることー。” 父であり師である北斎の背中から学ぶ彼女の気迫と勇ましさ、そしてこれまで語られなかった日々を映し出す傑作が誕生します。
歴史的名作誕生の瞬間、心の機微を丁寧に描く
いつも北斎から「おーい、おーい」と呼ばれることから「葛飾応為(おうい)」という号を授かった“お栄”。お茶もまともに淹れられず、針仕事も不得意だった彼女の性格は、豪胆で自由。そんな彼女は「美人画では敵わない」と北斎も認めるほどのずば抜けた才能を持ち、いつしか自らの意志で北斎とともに生きる選択をします。本作では、“お栄”から絵師・葛飾応為へと、江戸の芸能界を駆け上がるひとりの女性の人生模様を繊細かつ大胆に描き出します。

「吉原格子先之図」は、応為の代表作の一つ。「吉原遊廓」の光と闇を美しく描いた名品で、まるで別世界のように明るく輝く張見世と、暗闇で足元を照らす提灯の光の対比が陰影を際立たせます。さらに「冨嶽三十六景」は北斎の代表作の一つとして知られ、異なる季節や天候などを通じて富士の多様な美しさを捉えています。劇中では、これらの歴史的名作が誕生した瞬間も丁寧に描き出され、心の機微を掘り下げながら儚くも美しい世界観を見事に演出。人生のすべてを絵に捧げた彼らの情熱と、当時の様子が観客の心に響きわたり、静かな感動が生まれます。

応為をたくましくも軽やかに演じ切るのは、日本を代表する俳優・長澤まさみ。葛飾北斎を演じるのは、世界をフィールドに活躍する名優・永瀬正敏。そして、北斎の弟子であり、応為と友情を交わす実在の絵師・善次郎(渓斎英泉)を演じるのは King & Princeの髙橋海人。絵師を演じる三人は、劇中で実際に筆を動かすシーンも多く見られ、日本画家の向井大祐氏、松原亜美氏の指導のもと、平場で描かざるを得なかった当時のスタイルや、浮世絵特有の筆の持ち方などを忠実に再現。魂のこもったエネルギッシュな映像に注目です。
ほかにも、大谷亮平、篠井英介、奥野瑛太、寺島しのぶといったそうそうたるキャスト陣が、鮮やかに色を重ねるように集結しました。
200年前の出来事とは到底思えない、現代的な強さと自由な心をもち、江戸を駆け抜けた葛飾応為。応為が残したわずか数十点の貴重な絵は、まるで西洋画のような陰影を感じさせる独創性で、現在も多くの人々を魅了しています。
影があるからこそ光は輝くーー。限りある人生だからこそ、自分を信じ、自分らしく生きることに情熱を燃やした葛飾応為の生きざまを劇場でご覧ください。
文/ Maika (『映画とわたし』編集部)
作品詳細

【STORY】
北斎の娘、お栄はある絵師のもとに嫁ぐが、かっこうばかりの夫の絵を見下したことで離縁となり、父のもとへと出戻る。父娘にして師弟。描きかけの絵が散乱したボロボロの長屋で始まった二人暮らしだが、やがて父親譲りの才能を発揮していくお栄は、北斎から「葛飾応為」(いつも「おーい!」と呼ばれることから)という名を授かり、一人の浮世絵師として時代を駆け抜けていく。美人画で名を馳せる絵師であり、お栄のよき理解者でもある善次郎との友情や、兄弟子の初五郎への淡い恋心、そして愛犬のさくらとの日常…。嫁ぎ先を飛び出してから二十余年。北斎と応為の父娘は、長屋の火事と押し寄せる飢饉をきっかけに、北斎が描き続ける境地“富士”へと向かうが…。
2025年10月17日(金)
全国ロードショー
■キャスト
長澤まさみ
髙橋海人 大谷亮平 篠井英介 奥野瑛太 寺島しのぶ 永瀬正敏
■監督・脚本:大森立嗣
■原作:飯島虚心 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊) 杉浦日向子 『百日紅』(筑摩書房刊)より「木瓜」「野分」
■配給:東京テアトル、ヨアケ
©︎2025「おーい、応為」製作委員会