≪スティーヴン・スピルバーグのミュージカル映画≫新たなジャンルの幕開けとして『ウエスト・サイド・ストーリー』と“その次”に期待すること

スティーブン・スピルバーグ監督が、ブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド物語」を再び映画化!

▪︎簡単なあらすじ▪︎ 舞台は、1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニー(アンセル・エルゴート)は、シャークスのリーダーの妹マリア(レイチェル・ゼグラー)と運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていくこととなる…。
個人の範囲内でなるべく大きなネタバレに繋がらないよう文章を作成しておりますが、実際に鑑賞した後に感想をまとめているため、劇中に登場する表現・描写が含まれる場合がございます。
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.




【スピルバーグのミュージカル映画】新たなジャンルの幕開けとして、私が想うこと

映画『レディ・プレイヤー1』の公開を記念して、スティーヴン・スピルバーグが来日した2018年。「E.T.」をきっかけに中学生の頃からずっと心の中であたためてきた彼への想いが最高潮に達し、ジャパンプレミアでご本人を目の前にしたときは溢れんばかりの感動が私を包みこみました。

その頃、スピルバーグ氏が出演する番組すべてをテレビ画面に張り付くように見ていて、「次は、ミュージカル映画に取り組もうと思っているよ」とインタビューで語ったその瞬間から今日まで… 公開が待ち遠しくて仕方ありませんでした。

映画『レディ・プレイヤー1』 ジャパンプレミア
撮影:Maika

もともと私は、ミュージカル映画が特別に好きです。大変嬉しいことに、近年それらが業界の中で存在感を増していると感じています。
ひと口にミュージカル映画といってもバリエーションはさまざまで、アニメや実写映画、名作リメイクから完全オリジナルまで… 観客、そして制作側にとっても好みが大きく分かれる難しいジャンルだと思います。

そんな中、2016年公開の映画『ラ・ラ・ランド』は新しい時代の扉を開いた作品であり、デイミアン・チャゼル監督の大胆さと繊細さを兼ね備えた演出に、人々を誘う可能性を強く感じました。次に世に送り出した映画『ファースト・マン』では、宇宙を舞台に描いた作品ということもあり製作総指揮としてスティーヴン・スピルバーグが参加しています。本作はドキュメンタリーに寄ってはいるものの、偉大な二人の会話の中には“スピルバーグのミュージカル映画”誕生のきっかけとなったヒントが隠されていたのではないか…と、当時パンフレットをめくりながら胸が熱くなったことを覚えています。これは、個人映画サイトだからこそ綴ることのできる妄想にすぎないのですが。(笑)

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スピルバーグ氏は、2012年にドラマ『SMASH』の製作総指揮を務めています。 本ドラマは、ブロードウェイ・ミュージカル製作の舞台裏と人間模様をリアルにドラマティックに描いた作品で、劇中には歌やダンスも数多く登場します。
とはいうものの、『ウエスト・サイド・ストーリー』は、スピルバーグ氏にとって監督キャリア史上初めてのミュージカル映画作品。

監督が子供のころ、映画のサウンドトラックを聴いた瞬間に大好きになり、いつかこの作品に自身が携わるだろうという確信が芽生えていたそうです。最近のインタビューでも、 『ウエスト・サイド・ストーリー』 が愛され続けている理由の一番に、≪音楽が素晴らしい≫ということを熱く語っています。

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実は私は『ウエスト・サイド・ストーリー』の物語の展開があまり得意ではありません。きっと、最初から最後まで主に“人間の愚かさ”にフォーカスしていて、この時代特有の“香ばしい作風”の受け入れ先が心の中で燻っているからだと思います。

しかし、そのような物語とわかっていながらも、監督が細部にまでこだわった作品への想いを目にすると劇場へ足を運びたくなり、素晴らしいカメラワークと色彩美、リアレンジされた名曲たち、心踊る華やかな空間に また新たな気持ちで物語と向き合おうと思えたことも事実。そして今、久しぶりに映画の本質についてゆっくりと考える時間が持てていることに幸せを感じています。改めて書くまでもないですが、やっぱり、彼は本当に凄い人なのだと。

結果的に、“スピルバーグのミュージカル映画”は、私にとって大変素晴らしいジャンルの一つとなりました。もし次回があるのならば、心踊る瞬間を“完全オリジナル作品”でプレゼントしてくれることを期待しています。

わたしの“おすすめポイント”

  • エンターテイメントとリアリズム

本作では、1957年の舞台、1961年の映画のキャスティングとは異なり、「シャークス」の出演者全員をラテン系の俳優が演じています。また歴史的事実のリサーチに基づき、マリアやトニーたちが暮らすエリアがNY市の建築プロジェクトのために取り壊される様子を描写。彼らが生きているシビアな現実がよりリアルに感じられます。

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  • 業界を代表するクリエイターが集結!

ニューヨーク·シティバレエの専任振付家のジャスティンペックが振付、パリ·オペラ座音楽監督のグスターヴォ·ドゥダメルが指揮、アカデミー賞ノミネート経験を持つデヴィッドニューマンが編曲を担当。さらに歌唱監修をトニー賞受賞の作曲家ジャニーン·テソリ、エグゼクティブ·ミュージック·プロデューサーを「美女と野獣」「シカゴ」のマット·サリヴァンが務めるなど、ブロードウェイとハリウッドを牽引する才能がここに集結しました。

  • マリア役 レイチェル・ゼグラーが魅せる可憐さ

約3万人が参加したオーディションでマリア役を射止めたゼグラー。初めての映画出演にも関わらず、可憐でありながらどこかミステリアスさを漂わせる表情の変化や、のびのびとした歌声に魅了されます。

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作品データ

監督/ スティーヴン・スピルバーグ
出演/アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー ほか
日本公開/2022年2月11日(金)全国ロードショー
配給/ディズニー
オフィシャルサイト

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